映画 ″Last Holiday″ と Don't wait too long

2006年公開・クイーン・ラティファ主演のコメディドラマ「ラスト・ホリデイ」は私の大好きな映画です。1950年の映画のリメイクだけあってストーリーは王道中の王道、悪く言えばかなりベタな展開ですが、それが裏目に出ていない素晴らしくよくできた映画です。ド派手な役の多いクイーン・ラティファが珍しく地味で真面目な独身女性を演じています。

 

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 自己主張することもわがままを言うこともなくひっそりと生きてきた30代のデパート販売員(調理器具売場担当)のジョージアは嫌味な上司の下で安い時給でも笑顔を絶やさず真面目に働きます。思いを寄せる同僚の男性(グリル売り場担当)にもどう話しかけていいのかわからず、必要のないグリルを何度も買ってしまう健気な女性です。料理番組を見ながら料理を作る際にも、「ドバっと思いっきり入れちゃって!」とシェフが言っても恐る恐るちょろちょろっとしか入れられないシーンでも彼女の控え目な性格が表れています。しかしある日突然、余命3週間と診断され一人静かに嘆き悲しむ彼女。しかも高額な治療費は保険が適用されないと告げられ絶望します。

「真面目に生きてきたのになぜ私が!?」

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今までやりたいことを一度もやらなかったことを後悔した彼女は全財産を現金化し、豪遊して死ぬことに決めます。退職を告げる際に初めて失礼な上司に立ち向かったジョージアは、徐々に堂々と本音で発言できるようになっていきます。しかし彼女の発言は決して傲慢になることはなく、本質をついているのです。彼女が向かった先は、ヨーロッパの高級スキーリゾートホテル。

ファーストクラスで飛び

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憧れのシェフの高級レストランで食事

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カジノでギャンブル

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死を前にして怖いものなしの彼女は超危険なスポーツ、ベースジャンプまでしちゃいます。

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そんな彼女の豪遊っぷりに「一体何者か」と周囲の注目が集まり、チップ目当てのホテル従業員や、金持ちと仲良くしておきたい他の宿泊客らが彼女に群がります。地味だったときには見向きもされなかった彼女が金持ちに見えるときには人が集まってくるのだから現実的ですが、最初は興味本位で群がってきた人たちもやがて彼女の人柄に魅了されていきます。対照的に金持ちだけど性格が幼稚なデパートオーナーのマシューは徐々に周囲から軽蔑されるようになり、愛人にも去られます。

ジョージアの魅力についてホテル従業員はこのように評価します。

She is the most amazing person who ever came to this hotel. She lives on the edge. She says what she wants, she does what she wants. True existentialist.

(彼女はこのホテルを訪れた人の中で最も素晴らしい人物だ。スリル満点で生きている。言いたい事を言い、やりたいことをやる。真の実存主義者だ。)

 live on the edge 危険と隣り合わせで生きる

 existentialist  実存主義者 これは難しい言葉ですね。哲学用語なので解釈も難解ですが、Oxford Learner's dictionaries(学習者向け辞書)の以下の解説は割とシンプルです。

a person who believes in the theory that humans are free and responsible for their own actions in a world without meaning          www.oxfordlearnersdictionaries.com

無意味な世界の中で人間(だけ)は自由に行動できてさらにその責任を持つ といったところでしょうか。

Simple English Wikipedia(学習者向けにシンプルな英語だけを使って書かれたwikipedia)では以下のように書かれています。

The fact that humans are conscious of their mortality, and must make decisions about their life is what existentialism is all about. https://simple.wikipedia.org/wiki/Existentialism

 人間は自らの死すべき運命を意識しており、人生における選択を自分でしなければならないという事実が実存主義の考え方である。

 余命わずかにして人生を精一杯楽しもうとするジョージアはまさに実存主義を生きているのかもしれませんね。あこがれのシェフに出会い、ひとしきり楽しんだジョージアは愛する人に思いを告げるべく街に帰ることを決めるのですが・・・。この先は映画をお楽しみください。

 

この映画の冒頭で、まだ自信のないジョージアが寂しげに歩くシーンで流れるのが  Madeleine Peyroux の " Don't Wait Too Long " です。

 

 

You can cry a million tears
You can wait a million years
If you think that time will change your ways
Don't wait too long

 

一万回泣くこともできるし
一万年待つこともできる
でも時間が自分を変えてくれると思っているなら
いつまでも待ちすぎないで


When your morning turns to night
Who'll be loving you by candlelight
If you think that time will change your ways
Don't wait too long

 

朝が夜へと変わるとき
キャンドルの灯りのそばで誰があなたを愛してくれる?
時間が自分を変えてくれると思っているなら
いつまでも待ちすぎないで


Maybe I got a lot to learn
Time can slip away
Sometimes you got to lose it all
Before you find your way

 

学ぶべきことが沢山あるかもしれない
時間はあっという間に過ぎ去ってしまう
ときには全てを失わなければならないかも
自分の道を見つける前に


Take a chance, play your part
Make romance, it might brake your heart
But if you think that time will change your ways
Don't wait too long

 

チャンスをつかんで 自分のパートを演じて
恋に落ちて 傷つくことになるかもしれないけど
時間が自分を変えてくれると思っているなら
いつまでも待ちすぎないで

It may rain, it may shine
Love will age like fine red wine
But if you think that time will change your ways
Don't wait too long

 

雨の時もある 晴れの時もある
愛は上質なワインのように熟成するけど
時間が自分を変えてくれると思っているなら
いつまでもまちすぎないで


Maybe you and I got a lot to learn
Don't waist another day
Maybe you got to lose it all
Before you find your way

 

あなたもわたしも学ぶことが沢山あるかも
これ以上一日を無駄にしないで
何もかも捨てなければいけないかもしれない
自分の道を見つけるまでに


Take a chance, play your part
Make romance, it might brake your heart
But if you think that time will change your ways
Don't wait too long
Don't wait
Hmm... Don't wait

 

チャンスをつかんで 自分のパートを演じて
恋に落ちて 傷つくことになるかもしれないけど
時間が自分を変えてくれると思っているなら
いつまでも待ちすぎないで

※訳は私なりの解釈です。人によっていろんな解釈ができると思います。

自分を変えられるのは自分だけなんですよね。

 

ちなみにこの映画は、全体を通して比較的シンプルでわかりやすい英語が使われているので、英語の勉強にも適しています。アフリカ系アメリカ人の登場人物もみなクセの強すぎない黒人英語を使っているので、黒人英語の勉強の入口としてもとっても良いと思います。(洋画は英語字幕で見るのがおすすめです。)